まずは自分のリスニング能力を測定・把握しましょう

上田メソッドは、中級学習者を対象としているため、まずTOEIC®のリスニングテストをしてみて、自分のリスニング能力を
測定・把握する必要があります。使用するTOEIC®のリスニングテスト(100問、495点満点)は、過去の問題や市販されている
模擬試験問題で構いません。所要時間は約45分です。自分のリスニング能力がわかれば、最適な学習法もわかります。

英語のTOEICRのリスニングテストによる対象図

人間の情報処理に関する理論(Schneider & Shiffrin, 1977)と言語理解に関する理論
Anderson, 2010)に基づくと、このレベルの
学習者には、ディクテーション訓練が最も
効果的と考えられます。

 

以下の「全ての単語を聞き取る必要はない」と
「ディクテーション訓練」を読んで下さい。

人間の情報処理に関する理論(Schneider & Shiffrin, 1977)と言語理解に関する理論
Anderson, 2010)に基づくと、このレベルの
学習者には、リスニング・ストラテジー学習と
メタ認知学習が最も効果的と考えられます。

 

以下の「全ての単語を聞き取る必要はない」と
「リスニング・ストラテジー学習とメタ認知
学習について」を読んで下さい。

全ての単語を聞き取る必要はない全ての学習者

リスニングをしていて途中でわからなくなってしまい、聞くのを止めてしまった経験はありませんか?
水も漏らさぬように「一言一句全て聞き漏らすまい」と、肩に力が入った状態で、緊張した状態でリスニングをしていませんか?

 

リスニングにおいて、実際には全ての語句を聞き取らなくても、内容は理解できるのです。聞き逃しても、聞き取れなくても構わない単語も
あるのです。実は意味を理解するためには、「内容語」さえ聞き取ることができたらいいのです。このことを学習することで、
「リスニングの際に緊張しなくなる」「諦めずに聞き続ける」という効果があります。

 

それでは、「意味の理解に必要な内容語」とは、どういったものなのでしょうか?全ての単語は、内容語と機能語に分けられます。
上田メソッドでは、名詞、動詞、形容詞、副詞、5W1Hを内容語としています。
それ以外を機能語としています。

 

内容語とは

「内容を理解するために必要な語」です。上田メソッドにおける内容語は、以下の5種類としています。

  1. 名詞
  2. 動詞
  3. 形容詞
  4. 副詞
  5. 5W1Hwho, when, where, what, why, how

機能語とは

「聞き落しても、内容の理解に支障のない語」です。上田メソッドにおける機能語は、内容語以外の語としています。

 

例)チチ キトク スグ カエレ

 

これは典型的な昔の日本の電報文ですが、私たちは日常このようには発話しません。

チチガ キトクデスノデ スグニ カエレ/カエッテキナサイ」が、日常の発話に近いでしょう。
電報料金は、 文字数に応じて課金されるので、内容の理解に支障のない機能語が削除され「チチキトクスグカエレ」と送信したのです。

私たちは、内容語や機能語に関する知識がなくても、どの語が意味の理解と密接に関与しているかの知識は備わっているのです。

内容語と機能語はどの言語にもあり、英語にも応用可能です。このように、全ての語句を聞き取らなくても内容を理解できるということを
最初に指導することは、リスニングの際のストレスと緊張を軽減させる効果があり、とても重要です。

ディクテーション訓練初級学習者中級学習者レベル1

以下の訓練で、聞き取れる単語数や聞いただけで理解できる単語数が、確実に向上します。

 

  1. オーディオ・スクリプト(音声を文字で表したもの)のある音声を聞いてディクテーション(音声を聞いて文字で書くこと)する。

    【ディクテーションをする際のいくつかの重要なポイント】

    • 好きなところで音声を止めて構わない。
    • 聞く回数は5回まで*とする。
    • 音声を聞きながらメモを取り**、聞き終わったらメモを見て聞いた音声を清書する。

     

    これはシャドーイングの研究結果ですが、5回までは聞く回数に比例して統計学的に有意差(=科学的な効果)があるとの研究結果が報告されています(Hori, 2007)。

    リスニングにおいて、「メモの取り方」はとても重要です。音声による伝達速度は一般的に、筆記による伝達速度の約7倍といわれていますので発話と同じ
    スピードで書き留めていくことはできません。ですので、省略や短縮、数字、記号などを使って、記憶できないことを紙に書き留めること、つまり
    「メモの取り方」はとても重要です。メモは自分が書いて自分だけが見るので「どのように書き留めたらよいのか」に関しては、特に定まったルールや規則は
    ありません。但し、漢字を用いることは、メモを取ることの本質(素早く音声を文字化すること)から逸脱するので、メモを取る際には漢字は使わないことが
    重要です。

     

    具体的には、以下の例を参考にして下さい。

     

    練習)

    以下から自分の能力にあったディクテーション用紙を選んで印刷して下さい。

    【能力別 ディクテーション用紙】

     

    上記の【ディクテーションをする際のいくつかの重要なポイント】を読んでから〈 音声♪ 〉(Stafford, 2009)を聞いて
    ディクテーションして下さい。

  2. 〈 調査1:自分のリスニングにおける弱点はどこか? 〉
    オーディオ・スクリプトと自身のディクテーションを比較して、聞き取れなかった内容語のみ、蛍光ペンでをつける。

     

    例)

     

    この〈 調査1 〉でわかることは、「自分のリスニングにおける弱点」です。聞いただけでは、わからない単語はどれか?自分が
    聞き取ることができない単語は、どれか?ということが調査できます。

  3. 〈 調査2:語彙に問題があるのか? 〉
    をつけた語の中に、目で見ても意味のわからない単語があれば赤で丸で囲み、意味と品詞を調べる。

     

    例)

     

    この〈 調査2 〉でわかることは、「リスニング能力に問題があるのか?それとも語彙力に問題があるのか?」ということです。
    聞き取れなかった単語を見ても品詞や意味がわからなければそれは、リスニング能力に問題があるからではなく語彙力に問題があるのです。
    この場合、品詞や意味を調べてから、以下の4.に進む。
    一方、聞き取れなかった単語を見たら品詞や意味がわかった場合は、音声情報処理能力と文字情報処理能力に乖離(かいり=差や開き)が
    あることを意味しています。この場合は、以下の4.に進む。

  4. 〈 文字情報と音声情報の融合訓練 〉
    をつけた内容語を特に意識して、見ながら音声を聞く。聞き取ることができなかった内容語を見ながら聞くことの目的は、乖離が
    あった音声情報処理能力と文字情報処理能力の融合が目的です。回数は最低3回。
  5. 〈 音声単独で情報処理できる能力の訓練 〉
    当初聞き取ることができなかった内容語が聞き取れるようになっているかを確認するために、何も見ないで音声を聞く。回数は最低3回。
  6. 5.まで終了した段階で「当初聞き取ることができなかった内容語が聞くだけで聞き取れるようになっている」と手ごたえがあった場合は
    OK。あやふやな気持ちで自信がついてない場合は、4.へ戻る。

リスニング・ストラテジー学習とメタ認知学習について中級学習者レベル2上級学習者

リスニング・ストラテジー学習

上田メソッドにおいて「リスニング・ストラテジー」とは、リスニング能力を効率的に向上させるための「裏技」や「コツ」、「ポイント」を
意味します。リスニング・ストラテジーには、色々な種類がありますが、上田メソッドでは、以下の10項目を学習します。

1. 内容語と機能語

2. メモの取り方

3. スキミング

4. スキャニング

5. 予測

6. 推測

7. 修正

8. 背景的知識

9. 談話標識

10. 文法

リスニングに関するメタ認知についての学習

  1. メタ認知

    メタ認知とは、一般的に「自分の思考や行動を客観的に認識する能力」を意味します。
    上田メソッドにおいて「メタ認知」とは、「リスニングにおける自分の理解度をモニターし、足りない点を意識的に補うこと」を意味します。
    リスニング能力を効果的に向上させるために必要不可欠な要素です。
    マルク(以下、MALQ)というアンケートを用いて、自分のリスニングに関するメタ認知について知ることができます。

  2. MALQ

    MALQとは、2006年にリスニングの研究者によって作成されたアンケートです。
    正式名称はThe Metacognitive Awareness Listening Questionnaire. 2006年に Vandergrift, L., Goh, C., Mareschal, C., &Tafaghodtari, M. により開発された5カテゴリー(Planning(計画)/ Evaluation(内省), Directed attention(集中力), Person knowledge(リスニングに対する心理),
    Mental translation(翻訳), Problem solving(問題解決))、21問からなるリスニングに関するメタ認知アンケートです。

    • 計画・内省
    • 集中力
    • リスニングに対する心理
    • 翻訳
    • 問題解決

    〈 検査 〉 最初に、自分の「リスニングにおけるメタ認知レベル」を調べてみましょう。

    〈 診断 〉

    以下のカテゴリーや番号は、過去の研究結果*1より、リスニング能力向上者に共通して向上していました。
    よって、リスニング能力の向上に特に効果があると考えられる項目です。

    • 計画・内省
      1. Before I start to listen, I have a plan in my head for how I am going to listen.
      聞く前に、どのようにして聞くのか頭の中でプランを立てる。
      10. Before listening, I think of similar texts that I may have listened to.
      聞く前に、以前聞いたことがある同様の内容を思い出すようにする。
      14. After listening, I think back to how I listened, and about what I might do differently next time.
      聞いた後に「どのようにして聞いたのか」「次回はこんな風に聞こう」等、内省する。
    • 問題解決
      7. As I listen, I compare what I understand with what I know about the topic.
      自分が知っている内容と比較しながら聞く。
      9. I use my experience and knowledge to help me understand.
      自身の経験や知識を、理解促進のために用いる。
      17. I use the general idea of the text to help me guess the meaning of the words that I don’t understand.
      わからない語彙を理解する為に、一般的な知識を用いる。

      一度に全てをリスニングの最中に意識して実行するのは至難の技ですが、できるものからひとつひとつ、リスニングをする際に意識して
      実行していきましょう。

      151名の中級学習(TOEIC®のリスニングパート495点満点中166点から330点)を対象として、合計30週間行った実験。
      詳しくは Ueda,M.2015, p.81, p.95, p.118, p.137) 参照。

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