立命館大学 教授 上田眞理砂(博士 言語文化学)
現在、大学生に高校でどのようなリスニング指導を受けてきたのかを尋ねてみると、「注意して聞きなさい」「わかるまで何回も
聞きなさい」という回答が大半であり、その指導法は過去約40年間、大きな変化がありません。また、リスニングに関しての問題点を
尋ねてみると、「聞いただけではわからないが、見たら(読んだら)わかる」と、日本人英語学習者の多くが答えています。
そこでこのサイトでは、「理論とエビデンスに基づいた効果的なリスニング指導法や学習法(上田メソッド)」を具体的にわかりやすく
紹介します。
このサイトは、日本学術振興会 科学研究費JP17K03037の助成および立命館大学 研究成果 国際発信制度の助成を受けたものです。
上田メソッドは、日本人英語学習者の中でも特に中級学習者を対象にしており、2015年 大阪大学 言語文化研究科へ提出・受理された
拙論の研究結果を元にしています。上田メソッドには、以下4つの特徴があります。
日本人英語学習者の中で一番対象者数が多い中級学習者に特化
上田メソッドは中級学習者を対象としていますが、理由は人数が一番多いからです。
TOEIC®公式データによると、リスニングの平均スコアは、2016年が317点、
2017年が320点と、上田メソッドにおける中級学習者である166~330点に
位置しています。
日本人全受験者の約60%以上がリスニングにおいて中級学習者なのです。
これは2016年や2017年だけでなく、私が調査を始めた2010年から同様で、
他のアジアや南米の多くの国にも共通していることは、日本人英語学習者の大半が
リスニングにおいて中級学習者である、ということです。
学習者のリスニング能力に応じた最適の指導法や学習法を具体的にわかりやすく提案
まず、リスニング能力を標準テスト*2で測定し、自身のリスニング能力を客観的に把握
するところから始めます。
リスニング能力の測定や分類に標準テスト*2とMALQ*3を使用
リスニング能力の向上に不可欠であるメタ認知*4スキルを具体的にわかりやすく紹介
2011年に日本で実施されたTOEIC®データに基づく。なお、2012年以降はリスニング、リーディングに分けてのスコア分布は
公開されていません。
上田メソッドにおいて、「標準テスト」とは、国際的に認知されており、安価もしくは無料で入手可能で、なおかつCEFRと
互換性があるテストを意味します。
VandergriftやGoh、Mareschal、Tafaghodtariによって2006年に作成・公開されたリスニングにおけるメタ認知を調査する
アンケート。21項目、5カテゴリー(Problem Solving, Planning/Evaluation, Mental Translation, Person Knowledge, Directed Attention)で
構成されている。1(Strongly disagree)〜 6(Strongly agree)の6つのスケールから回答する。
上田メソッドにおける「メタ認知」とは、「リスニングにおける自身の理解度をモニターし、足りない点を意識的に補うこと」を
指します。また、Oxford(1990)は、 “metacognitive” を以下のように定義しています。
… “metacognitive” as beyond, beside, or with the cognitive, and “metacognitive strategies” as actions which go beyond purely cognitive devices, and which provide a way for learners to coordinate their on learning process.